マネキンは、アパレル店舗のディスプレイにおいてアイキャッチとなる他、ブランドや商品の方向性を示す大切な役割を担います。
店頭ではマネキンに商品を着せることでお客様にイメージを直感的に伝え購買意欲を引き出す重要な要素でもあります。
マネキンの形や表情はブランディングや商品のコンセプトによって多様です。
頭髪やメイクを施し実際の人間に近づけたもの、表情を持たずあえて印象を絞り込ませないもの、個性的なポージングで使用シーンを演出したものなど。商品を身につけた時のストーリーをお客様にイメージしていただき、商品の良さやニーズを明確に伝えるために様々な表現が可能です。
ここでは、ディスプレイの大切な要素とも言えるマネキンがいかにして造られているのか、種類や製作事例、造り手の想いを交えてご紹介いたします。
1.マネキンとは?
マネキンは、ブランドのクリエイティビティと個性を引き出すために欠かせない存在です。立体的な展示とデザインの視覚的表現によって、商品の魅力や個性を際立たせることができます。また、マネキンによってブランドのデザインのビジョンがお客様により具体的に伝わります。
マネキンはただ商品を着せるだけでなく、その存在自体がストーリーテリングの一部。ブランドイメージを強化する手段となり、マネキンによって商品がより魅力的に映え、お客様に直感的なインスピレーションを与えることができます。
マネキンは売場でキャッチポイントとなるVMDにおいて重要なパーツ。テイストや機能をマッチさせることでブランドイメージの訴求により効果を発揮します。
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細やかな造形と華やかなメイクで実際の人間に近づけたリアルマネキン。
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表情を持たないアブマネキンと様々なポージング展開。
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ユーザーの使用シーンをイメージさせる展示手法。
2.マネキンの種類
ひと口にマネキンと言っても種類は様々です。
ここでは大きく分けて4種類のマネキンと、より簡素化された形状の「トルソー・ボディ」をご紹介します。
リアルフェイス
名前の通り、人間の顔を忠実に表現したマネキン。
メイクをすることで追加のコストもかかりますが、ブランディングターゲットに向けてより深く訴求できることから、近年ではハイブランドのショーウインドウなどでよく見られます。
アブストラクト(アブ・抽象)
日本語で「抽象的」という意味で、目・鼻・口・耳の造形を抽象的な表現にしたマネキンの総称です。目や鼻もなく、卵のようにより抽象化されたエッグフェイス(エッグヘッド)もアブストラクトの仲間です。
ユーザーイメージや商品の使用シーンを特定させず、様々なブランドで汎用性の高いタイプのマネキンです。
スカルプチャー
「彫刻」という意味で文字通り、髪型とボディを一体で造形したマネキンです。
顔の表情をより精巧に仕上げるリアルマネキンと、抽象的なアブマネキンの中間的な存在です。デザイン性が高くスタイリッシュなものが多いのが特徴です。
ヘッドレス
名前の通り頭部が省略されたヘッドレスタイプのマネキンです。マネキン自体の表情を消すことで存在感を弱め、より商品にスポットを当てる効果があります。
その特性を活かし、他のタイプのマネキンをメイン展示としヘッドレスマネキンをサブ的な役割で配置するなど、ディスプレイにコントラストを演出することも可能です。
トルソー・ボディ
マネキンが全身であるのに対し、体の一部を形にした「トルソー」や「ボディ」と呼ばれるタイプもあります。
胴体だけのもの、可動式のアーム付きのタイプなど様々で、表面の仕上げも布地張りやFRPなどの種類があります。洋服を美しくディスプレイするという意味では、マネキンとトルソーの役割は同じと言えますが、マネキンはブランドイメージをより深く表現するためポージングなども考慮して使用し、衣装替えもしやすいトルソーで商品を効果的にアピールするなど、それぞれの特長に合わせて活用されるのがおすすめです。
このように使用シーンやブランディング、商品に合わせてマネキンも多様です。 年齢・世代や性別、ポージング、色も合わせれば無数に表現が可能です。
3.アディスミューズの強み
当社のマネキンは、国内有数の経験豊富な原型師がお客様のご要望や時代のトレンドに合わせて自社工房で製作されています。
自社生産された高品質なマネキンは、レンタル商品として必要な時に必要な数量をお客様に提供できるよう、常に品質管理されています。
また、自社生産だからこそできるオーダーメイドにも対応しております。
原型制作から量産、ディスプレイシーンに合わせた細部の調整など、お客様のコストや納品までの期間に合わせて手法を変えての対応も可能です。
既製品
アディスミューズでは、さまざまなタイプのマネキンをレンタルや販売商品として取り揃えています。
年齢や性別、サイズやポーズ、表情など理想的なマネキンがございましたらそのままご使用いただけます。色変えなどの塗装や、木目・大理石などを擬した特殊塗装、リアルマネキンのメイクなども対応いたします。シーズンイベントのシーンの構成に適した、ファミリーなどのシリーズ商品も人気です。
カスタムオーダーメイド
既製品の改良制作。
既存の体型、ポージングを活かしながらお客様のご要望に合わせた形で部分的に修正を加え、新たなマネキンを生み出す手法です。
フルオーダーメイドに比べ、制作期間と費用を大幅に削減することができます。
時間とコストをかけずにオリジナルのマネキン制作をご検討されているお客様におすすめです。
専任の原型師が直接ご要望をヒアリングしながら造り上げます。
フルオーダーメイド
企画・デザインから製作まで、お客様とともに新しい形のマネキンを生み出します。
まずは専任の原型師がお客様へヒアリングし、エスキースや粘土原型などでの内容確認を行います。制作の中で確認と修正を繰り返し、細部までご要望に合わせたマネキンをご提供いたします。
国内有数の原型師を持つ当社だからこそのサービスになります。
既製品とオーダーメイドについて紹介してまいりました。
以下では、マネキンの製作工程をご紹介します。
4.マネキン製作のプロセス
粘土原型制作
マネキンづくりはエスキース(ミニチュア)の制作から始まります。
細部を確認しながらイメージを形にしていきます。
エスキースでイメージが出来上がったらいよいよ実物大の原型の制作に取り掛かります。
金属棒の骨組みに粘土で肉付けし仕上げていきます。
石膏型取り
実物大の粘土原型が出来上がったら、粘土原型に石膏を塗布し型を制作します。
最初は薄く気泡が入らないよう慎重に塗布します。完全に固まったら補強用木材と麻を使用し徐々に厚みを付け歪みのない型に仕上げて行きます。
マスター原型制作
出来上がった石膏型にポリエステル樹脂と補強繊維を貼り込んで丈夫なFRPでマスター原型を制作していきます。
石膏型から取り出した原型は凸凹しているので、研磨・パテ埋めを入念に行い表面を滑らかに仕上げていきます。
頭部や腕、腰部分の接続部材もここで取り付けます。
生産型制作〜製品化(量産)
マスター原型が完成したらそれをもとにいよいよ生産型の制作。製品はマスター原型制作とほぼ同じ工程で製作(量産)します。ポリエステル樹脂をできる限り薄く貼り込むことで、軽くて丈夫な製品ができあがります。
マネキンの素材として一般的なFRPにはガラス繊維が使われていますが、近年ではその廃棄が問題となっており、SDGsの観点から廃棄の問題もクリアでき持続可能な素材であるバサルト(玄武岩)繊維への置き換えが進んでいます。当社は「アディスミューズ モア・サステナブル宣言」を掲げ、ビジネス環境の構築を加速させる取り組みに力を入れております。
塗装・メイク
生産型から取り出した製品は、バリを取ってパテ仕上げを行い表面が平滑になるまで磨きます。表面が仕上がったら、いよいよ最後の工程の塗装・メイクの作業に入ります。
地吹作業は、ムラにならないよう専門の職人が全体に均等に着色して行きます。塗料は通常ラッカーなどが使用されます。
季節や環境にも左右されるためしっかりスケジュール管理された上で時間をかけて慎重に行います。
リアルマネキンの場合は、顔に表情を持たせるためにメイクが施されます。特殊な顔料や筆、エアブラシやスポンジなどを駆使して、お客様のご要望に近づけるよう精巧に仕上げていきます。
最終確認・納品
塗装・メイクを終えたら完成です。最終確認を経てようやくお客様の元にお届けとなります。 店舗やイベント・催事など、ご利用の条件に合わせて施設への搬入・設置も行います。
5.事例紹介
マネキンは、ブランドのクリエイティビティと個性を引き出すために欠かせない存在です。等身大の表現によって、商品の魅力や個性を際立たせることができます。それによって、ブランドのアイデンティティがお客様により具体的に伝わるでしょう。
ただ商品を着せるだけでなく、その存在自体がストーリーテリングの一部。マネキンによって商品がより魅力的に映え、お客様に直感的なインスピレーションを与えることができます。
また、マネキンは売場でキャッチポイントとなるVMDにおいても重要なポイントにもなります。ポージングや使用シーンをマッチさせることで訴求効果をより発揮します。
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ウィンドウディスプレイ。新作のコンセプトを華やかなディスプレイと合わせて表現。
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ショッピングモールのVP。ファミリーの日常を表現。
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リアルマネキン。アーティスティックなメイクでブランドを引き立てます。
6.おわりに
アディスミューズのマネキンは、お客様のブランドや商品がより輝くよう、日々のメンテナンスも徹底し、補修、塗装、メイク、それぞれのプロがひとつひとつ丁寧に仕上げて出荷しております。
当社のマネキンをご利用いただく際には、ぜひ商品に込められた職人の想いも感じていただけたら幸いです。